LA MADONNA―高田明美さんの絵について

高田明美鮎川まどか

今日高田明美さんの画集「LA MADONNA」を衝動買いしてしまった。街の本屋で偶然見かけて、ちょっと値段が高いかもと思ったけど、まどかの色っぽい表紙に惹かれて買ってしまった。『きまぐれオレンジロード』は嫁さんでも知っていた。微妙に僕達の世代ではないのだけれど、実はこの作品、僕の中学生の時の担任が大好きで、生徒達に布教しまくっていたという過去がある。嫁さんとは中学で同級生だったので、知っていたというわけだ。この作品はその先生が教えていた学校では多分知らない生徒がいなかったと思う。あの先生今どうしてるんだろう。

原作本をちゃんと一から十まで読んだのは大学生になってからで、アニメをきちんと見たとなると、恐らく大学生〜社会人に跨ってという事になる。漫画は漫画でまた魅力があるが、高田明美さんの話なので、参考程度に留めつつ。高田明美さんは『うる星やつら』『めぞん一刻』(〜27話から)のキャラクターデザインで知られているアニメーター・イラストレーターである。

絵には詳しくないので、素人目の感想になってしまうが、この人の描く絵は何ともいえない『暖かみ』を感じる。公式サイトで数々のイラストを公開されているので、興味がある人は覗いて見るといい。その『暖かみ』が、鮎川まどかの魅力を充分に引き出しているのは間違いなく、まつもと泉の描く鮎川まどかに比べると母性を強く感じるのだ。この点やはり女性のイラストレーターと言うべきなのか。大人になったまどかは母性と色気が危うさが同居した女性とも言うべき形になっている。後年絵柄が変わってきたせいもあるが、それでも高田明美の描くまどかが昔の絵と同じく男の心を掴んで話さないのはそのせいだろう。ミステリアスだけど何処か暖かいそしてエロティック。一見矛盾するその要素を全て絵に込める事の出来る高田明美。周囲に色んな自分の顔を見せる鮎川まどかというキャラだからこそ表現できる所もあるだろうが、とにかくページを捲るごとに、まどかが目に飛び込んでくるのは眼福という他なく、高田明美さんの仕事を充分に満喫している。まどか絵が7割というのが実に俺得である。

きまぐれオレンジロードのオープニング演出―鏡の中のアクトレスを例に

こんな記事を書いていたら、突然見たくなったので、紹介してみる。現在のアニメと比べても断然上との評価を集めるアニメのオープニング集。オープニングもかなり出来は良いが、EDも中々のセンス。夏のミラージュのまどかの憂いた横顔は結構好きだったりする。1stOPの200を超えるとも言われているカットの応酬と3rdOPの打って変わってのワンカット長回しを同じ作品でやってしまうという所が凄い。。ワンカットの長回しをアニメでするという事の意義はこのサイトで詳しく語られているので、引用してみた。

で、アニメやTVドラマを見ていて感じるのは、そういった「映画(=動いている映像)でしか作ることのできない画面」、つまり「動いているカメラの視点でモノを撮る」ということを滅多してくれない、という不満です。予算とか時間の問題が一番の原因でしょうが、会話のシーンだと相互に話している人物のアップやバストアップをカットでつなげる、といった作りの単調さが気になるわけですね。だいたいそのようなシーンは、漫画でもコマ割りを工夫したり、小説の場合だったら「と、○○は、いった」が続かないように、(西村京太郎大先生以外は)気をつけたりしているわけで。TVドラマやアニメの中の人物は、あんまり道を歩きながら会話をしないし*1、「正面を向いている人物」と「その人物の背中」とはワンカットでは(カメラを回すように動かしては)撮りません。

他の文で指摘している通り、コスト的な問題もあるかもしれない。しかし今のアニメは数が多いし、ニーズもあったりして、映像的演出で視聴者を魅了するというのが難しいのかもしれないという事情もあるのかもしれない。ちなみにきまぐれオレンジロードのこの演出を行った意味としては主人公の親父さんがカメラマンであるという設定が関わってる気がしなくもない。まあこのOPに関しては余談という感じなので、個人的にもうちょっと調べてみて、書ける様でしたらまたネタで書きます。

高田明美の絵へのこだわり―鮎川まどかを水彩絵で描く事の意味

高田明美は水彩画が実に多い。きまオレの版権絵でも結構見かける。本人もアクリル絵の具を使用することが多いそうなので、その特色を活かしたものだと推測される。書き手からすればアクリルは乾燥が早いので、作業の能率を上げる意味でも非常に効果的ではあるのだが、他にも特徴として色を塗り重ねて盛り上げる事が出来る。水彩絵というと総じて質感が弱い印象を受けるが、案外色々表現できる絵という事なのだろう。

そんな高田明美、キャラクターデザインを手掛ける上での彼女のこだわりを感じられる話がある。 『うる星やつら』『魔法の天使クリィミーマミ』のデザインを手掛けた時の裏話から。

キャラクターが持つ「魂」に器を与える仕事 - キャラクターデザイナー・高田明美

メインキャラクターの色指定を決めるところまでは、やってますね。ラムの髪の色も緑に決めました。単行本のカバーを見ると、いろんな色に塗ってありましたが、虎縞ビキニは黒と黄色で決まりなので、それに合わせて一番きれいに見える色を。

青緑なんですけど、当時ぴったり来る色がなかったので、絵の具を混ぜて作ったんです。チャートの色数を増やすのって、会社は嫌がるんですけど(笑)

公式サイトで時々自分の絵についての技法に関して短くコメントされているが、その中でも特にこだわりを感じるのは色彩と個人的には感じている。というのも上記のインタビューもそうだが、色に関してはその時その時描いた絵で最も映える色を試行錯誤して決めている場面が結構あるからだ。アニメのキャラクターデザインに関しても、うる星やつらのように原作がこういう色彩だからと縛られる事が基本的にない。彼女の絵がいつも新鮮に見えるのはそのせいかもしれない。

水彩絵というのは見る側にとって多くは儚げなイメージを持たせる絵だ。特にきまオレは今の日本では失われた80年代の雰囲気を感じられるという見方の側面が強い。日本が最もパワーを持っていたこの年代、今ではもう戻れないという『寂寥感』を何となく感じさせるこの作品、そしてその象徴であるヒロインの鮎川まどか。彼女を水彩絵で描くという事は高田明美のこだわりが表現として時代によってブラッシュアップされている稀有なケースじゃないかと画集を見て思う。色々そう考えてみると感慨深い。

高田明美画集「LA MADONNA」高田明美画集「LA MADONNA」
高田 明美

ホビージャパン 2009-05-01
売り上げランキング : 203038

Amazonで詳しく見る
by G-Tools