咲、咲 -阿知賀編-に見る、アニメの『逆輸入』

咲 -阿知賀編-が今絶賛放送中。1話辺りの展開が物凄い速い事で物議を醸し、そのテンポの速さ故に作品としての評価がやや分かれ気味になってきている。原作もかなり展開が速いので、原作通りといえばそうなんだけど、アニメオリジナル展開とか入れるとかして、せめて奈良県大会の所はじっくりやっても良かったんじゃないか?という意見は結構見られた。原作は準決勝の先鋒戦までで、その先鋒戦も未だに勝負が決していなかったので、アニメでやる以上中途半端な終わりというのはちょっと空しい。奈良県最強と謳われた晩成高校との激戦を見たかったという人も多く、結局アニメ化は時期尚早だったのではないか?との見方がアニメ終盤にして強まってきている。

咲本編がアニメ放送された時の事だ。僕はリアルタイムで見ていないのだが、原作にはない個人戦の模様をアニメでオリジナル展開として入れてきた。元々原作者の小林立個人戦は原作でやる予定でいて、アニメスタッフに個人戦の展開を伝えている。しかし個人戦を原作でやるという構想は崩れ、結局団体戦のみを描いただけで長野県予選編は終了。結局アニメで描かれた個人戦の優勝者は、風越学園の主将である福路美穂子だったのだが、原作では個人戦も『やった』ものだとし、全国大会には福路を個人戦出場者として登場させてきた。元々予定していたものとはいえ、アニメの展開を原作に取り入れるというこの工程は非常に良い判断だったと思う。

ただアニメで受けた要素を原作の方でも活かすというのは昔からあって、例えば『名探偵コナン』に出てくる高木刑事も元々は原作には存在していなかった。アニメでその高木刑事がクローズアップされるようになり、原作がそれを逆輸入する形で登場させた、そういった背景がある。高木刑事は今では原作・アニメ両方共に活躍している事を考えると、このアニメと原作のお互いを補完しあう関係は非常に面白いと思う。 バーダック鳥山明がテレビSPを見て気に入って、1コマだけだがわざわざ登場させている。アニメスタッフのこうしたアイディアは結構貴重なのだ。昨今アニメオリジナル展開というとやたら評判が悪い事が多い時代になってきているが、オリジナルアニメも最近ではかなり面白いのも続々出てきている事を考えると、こうしたアニメオリジナルの要素が原作に逆輸入されるというのも、もっともっとあっても良いと思うのだ。

咲 -阿知賀編-のアニメは現在準決勝の先鋒戦に突入。もう少しで原作を追い抜き、アニメオリジナルによる準決勝のエピソードも放送が予定されている。例えばこれはジャンプアニメに顕著だが、アニメの回が原作に追いつきそうになると、アニメの方で調整をするようにしている。最近だと銀魂が思い浮かぶが、これはアニメオリジナルの回が総じて評判が良くなかったのもあるのだろう。しかしまあそういったのに捉われず、アニメの方でやれるのだったらやってみてはどうかと思う。勿論原作者とそして出版社との兼ね合いもあるので、実現は中々難しそうだが。しかし咲の個人戦の展開は賛否両論あったが、中々楽しめた。今まで出てきた人物のオールスター試合といった雰囲気がたまらなく良かった。団体戦で不完全燃焼だった、竹井久と福路美穂子の決着も個人戦できちんと描かれた。咲 -阿知賀編-のアニメ化は時期尚早だったという声も多いが、こうした逆輸入による恩恵の可能性も考えると、またそれもアリなのじゃないかと思うのだ。

咲-Saki-阿知賀編 1 (イベント先行購入抽選券付属初回生産仕様) [Blu-ray]咲-Saki-阿知賀編 1 (イベント先行購入抽選券付属初回生産仕様) [Blu-ray]

ポニーキャニオン 2012-06-20
売り上げランキング : 33

Amazonで詳しく見る
by G-Tools