シノハユ 感想

シノハユの内容に関して盛大にネタバレしておりますので、閲覧は自己責任でお願い致します。

シノハユは阿知賀編に続く咲のスピンオフシリーズですが、今回の主役は咲達のような現役高校生ではなく、プロ麻雀士達にスポットライトを当てたお話です。牌のお姉さんこと、端原はやり(28)の出身地である島根を舞台にとある少女の人生を描いたストーリーとなっています。

ざっくばらんに話しますと、麻雀が大好きなシノという少女が行方不明になってしまった母親を探す為に麻雀大会で優勝して有名になって母親にアッピールするお話なのです。つまりは「母親に会いたい」というのがこの「シノハユ」の最大のテーマとなっています。

思い返してみれば咲-本編は主人公である咲が自分と距離を置き続けているお姉ちゃんに会いたいというのがテーマで 阿知賀編は離れ離れになってしまった和と会って全国で一緒に遊ぶというのがテーマでした。 そしてシノハユは先程も書いたとおり母親に会いたいというテーマなので、咲シリーズに至っては「麻雀を通して特定の人物と会う」というのが全作品を通してのキーワードになっていますね。

咲に関しては幼少時の咲と仲の良かった人物が事故にあったという過去が宮永姉妹に何らかの壁を築くきっかけになったかのような示唆をされていますが、姉が消息不明という訳ではないですし、疎遠になったきっかけを咲自身自覚しているようにも思えます。だから照の事を考えると尻込みしてしまうし、ちょっと億劫になる。麻雀を通してならお姉ちゃんと話せる気がするというのは、自分を相手してくれない照に対する手段ではなく、咲自身が麻雀を通してでないと照と直接話せないという気がしますね。つまり咲自身の問題であって、相手がどうこうというレベルの話では少なくともないと感じます。

阿知賀に関しては離れてしまった友達に会う。ちょっとしたすれ違いはあったものの、当人同士が仲違いをした訳ではないので、ライトな路線でテーマが展開されていました。只、穏は和に会うだけではなく全国で一緒に戦う事を目指しているので、ゴールという意味ではまだ到達していません。決勝で対戦した時に双方の関係がどのように変化するのか気になります。と言っても実際に戦うのは和と全く繋がりがない灼なんだけど…w

しかし他の二作品と違い、シノハユは「母親と会う」という事に関しての意味が非常に重く描かれているように思います。
だから、という訳ではないですが麻雀における描写は他2作品と比べると明らかに扱いが小さく、人物重視の傾向が強いです。

一方シノハユは母親が消えた理由が不明ですし、あまりにも突然に消えたので、母親が消えた理由がよく分かっていないシノにとっては「何故?」という驚きと「私は必要とされていないのかな?」と言い知れない不安というのが付きまとっています。 ちょっと今までの咲と雰囲気が違うな〜というのはこうしたヘビーな設定が関係しているのは言うまでも無く―これまでのように女の子がキャッキャッしながら麻雀をしている話とはちょっと路線が違うように感じましたね。

何にせよ今までの咲シリーズとはちょっと路線が変わっている作品のように感じました。 まだ始まったばかりなので、今後また少し雰囲気が変わってくるかも知れませんが、今の所は何回も読み返してしまうぐらいハマリこんでいるので、自分にとっては完結までお付き合いできそうな作品だと思ってます。