今期最大の問題アニメ―水島・久米田コンビにおける『じょしらく』の思わぬ化学反応

久米田作品は僕は『かってに改蔵』が大好きでした。しかし『さよなら絶望先生』はどうも序盤の展開が自分に合わずに放り投げてしまいました。アニメもほとんど見てません。なので、久米田作品に本格的に触れるのは随分久しぶりになるのですが、この『じょしらく』合いも変わらず不謹慎すぎるブラックネタのオンパレードでちょっと安心しました。会話劇を楽しむ所謂『楽屋ネタ』的な作品ですが、その会話の随所にネタが盛り込まれており、会話自体が面白いので、それを普通に楽しんでもいいんですが、後々にwiki等を見て、あのネタは実はこういう事だったのか!と発見できる楽しさも持ち合わせています。wikiで調べる楽しさというのは、今期で言えば『境界線上のホライゾン』にも通じるところがありますね。

久米田作品に触れた事がある人は既に承知だと思いますが、この人の作風でまず凄いと思うのは、いくらアウトなネタでも、ギリギリ笑って済ませられるレベルに持ち込んでくる事です。アニメ化も何度もしていますし、賞も獲りましたし、メジャーというと憚られるかもしれませんが、そこそこのネームバリューは持っていると思います。しかし前述した作風のせいもあり、何処かアンダーグラウンドな雰囲気を持つ独特の漫画家です。パロディ乱発作風って別に珍しくないんですが、ネタをエピソード毎に設けられたテーマに巧妙に組み込んでくる所がこの人にしか出来ないまた魅力でもあり、私はちょっとしか読んでいませんけども、絶望先生のコミックスにある『紙ブログ』がそれに直に触れる好例かなと。

前口上はこのくらいにして『じょしらく』本編の話ですが、1話から飛ばしてきて、よくこんなのを深夜帯とはいえ、電波に乗せて放送できるものだなあと逆に感心しました。日露関係が最悪と呼ばれる現状で北方領土問題をネタにしてくるのは、原作自体が数年前からあるのと、原作者が最早アレなのでしょうがないですが、アニメにしている水島監督も中々の強者だと感じます。2話での予防接種の話で『のりP、マーシー、押尾(勿論個人名はきちんとSEで伏せています)とか』『(押尾は)飲ませたんだろ!』の会話は不謹慎だと思うのですが、笑ってしまいました。現在は2話までしか放送していませんが、高確率で洒落にならないブラックネタを仕込んでくるので、魅力だとは思うのですが、今後もこの路線で行くのかどうかちょっと心配だったりしますw

水島監督もそうですが、脚本担当の横手美智子さんも見逃せませんね。過去にシリーズ構成を担当したギャグ作品が『ジャングルはいつもハレのちグゥ』『侵略!イカ娘』(水島監督とはコンビ組んでますよね)とこの手の作品は最早お手のものといった感じで、実にテンポ良く会話劇を繰り広げてくれています。会話劇で一番重要なのは会話における間だと思うのですが、この作品で言えば魔梨威のツッコミ台詞である『つまんねー事聞くなよ!』が会話の中で絶妙のタイミングで挟まれてくるので、見ていて気持ちが良いです。久米田作品においては間を意識するというのは、彼の作風から言えば、あんまり必要ない要素だとは思います。しかしハレのちグゥに代表されるように、こと水島作品に限っては会話のテンポは非常に大切です。じょしらくは久米田・水島両名の良い所をバランスよく内包していて、ノリでも楽しめる・隠されたネタを探すのでも楽しめるという風にバラエティに富んでおり、視聴者の間口を広げているのが成功の鍵かなと。

また原作が元々そうなのかも分かりませんが、1話につき3パートで構成してるのも、テンポの良さに拍車を掛けていますね。会話劇だと展開に起伏がないので、下手すると終了まで話がダレてしまう恐れがあるのですが、パートを分ける事でその問題点を払拭しています。他にも飽きさせない工夫として、基本的にAパート・Cパートは楽屋の中での話を据えていて、間となるBパートは楽屋を飛び出して、各キャラクターのプライベートな部分を重視した作りになっているのも面白いですね。Bパートは皆服が普段着になっていますし、こういう所の工夫で新鮮味を引き出しているのかなと、そのような印象を受けました。後、EDはヒャダイン×ももクロのコンビなのですが、こちらも疾走感があって、作品の雰囲気に合った良曲になっています。

落語なんてわかんないしーそれだけで敬遠していた人にとっては全然違う作品なので、一度視聴をオススメします。 ただまああまりにも不謹慎なネタが多いので、それを笑って許せるか・そうでないかで、作品に対する評価が違ってきてしまいますね。 でもハマる人はとことんハマってしまう作品だと思います。