スペインの優勝から見えた、現代サッカーの流行

EURO2012はサッカーの強豪国が多く参加するせいか、今のサッカーの流行というのが、ちょっと見えた大会でもあったかなあと思います。 スペインがそれを象徴していますけど、現代サッカーのスタイルとして見逃せないのは『ポゼッションサッカー』『代表チームのクラブ化』ですね。

今大会でポゼッションサッカースタイルを踏襲したチームで一番印象的だったのが、カテナチオが代名詞だったイタリア代表です。 現代表監督プランデッリ監督は2年前から、このスタイルを使用しているとの事なので、時期的にはW杯以後の事となりますね。 ただイタリア代表だけでなく、堅守速攻がウリだったギリシャ代表も、僕はポゼッションサッカーを目指していたように映りました。 現代サッカーの潮流が今はポゼッションサッカーに完全に移行しているというのは、この大会で改めて証明されたかなあと思います。

それとポゼッションサッカーの確立として見逃せないのが、代表チーム=クラブチームという方法論ですね。 例えばスペイン代表のスタメンの各所属チームはダビド・シルバジョルディ・アルバ以外は全てレアルorバルセロナ所属です。 その中でジョルディ・アルバは来期からバルセロナに所属することが決定しています。またアルバはバルサカンテラ育ちでもあります。

代表チームはどんなに実力を兼ね備えている国でも、自分が普段所属しているクラブとは違うプレーをするので、準備期間が短いと、そのプレーが上手く発揮できないという事になります。今の日本代表の場合は、スタメンのほとんどが海外で、しかもリーグもチームもバラバラなので、各個人の実力は高いものの、連携を高めるのが難しいと言われています。最終予選での日本代表の好調ぶりは、海外リーグがシーズンオフであったので、海外組が早めに準備に取りかかれた事で連携を深める事が出来たのが大きいと言われていますよね。

スペインの場合前述した通り、スタメンはほとんどがバルセロナ・レアルで占められているので、代表チームでもクラブチームでもやっている事があんまり変わりません。元々バルセロナ・レアル自体が世界的に見てビッククラブだという事で、そこに所属する選手も、スペインだからという訳ではなく、世界的に見てもレベルの高い選手が所属しています。自国リーグのレベルの高さがそのまま代表に反映されている好例だと思います。

この考え方をあてはめれば、日本も世界に行く選手ばかりを育てるわけではなく、自国リーグのレベルを上げることで、代表がもっと強くなるんじゃないかなあと思います。例えば海外では比較的外国人枠のせいで獲得・起用しづらいDFとGK。これを逆手にとって、日本でこのポジションを重点的に育成を世界基準まで引き上げるように力を入れるとかね。このように海外挑戦が多くなった=必ずしも代表チームの強さに直結するとは限らないので、たまに飛び出す海外挑戦への専門家・批評家の文句は分からなくもないです。

さて、ポゼッションサッカーの源流は元を見てみれば、バルセロナカンテラにある『トライアングルシステム』だと言われています。 このシステムを選手に覚え込ませる為に11人構成のチームで同数の人間をまずは対戦相手として絞込み、後の人数をフリーとして振り分けるという形での練習を行っています。守備側と攻撃側。そして一方の側にフリーマンを配する事で、どちらかの側を常に数的不利にするような状況を作り出すわけですね。

この練習で得られるのは、数的不利な状況でのボールの回し方とそれをボールを受け取る動き(オフ・ザ・ボール)ですね。それと守備への意識。何故スペインはあんなに狭い密集地帯で自分達のサッカーを展開できるの?という疑問の答えが実はここにあるわけです。 後スペインは攻撃の美麗さが目立ちますが、実は守備も安定しているという特徴があります。今回のこのEUROでは強豪が集う大会で1失点しか許しませんでした。南アフリカW杯でも失点数は少なかったですので、スペインの強さというものは、実はバルサの下部組織のサッカー理念に基づいているとも言えます。

世界レベルを肌に感じる事が出来、我々を楽しませてくれたEURO2012ですが、今のサッカーの流行等、参考すべき点も多かった大会でしたね。 日本サッカーの更なる発展の為に、関係者の人達は色々頑張ってほしいですし、僕らも応援という形で支えていかなければと改めて強く思いました。