トゥーロン国際大会で見えたU-23日本代表の課題

昨日のトゥーロン国際は日本代表はエジプトに3-2で負けてしまい、グループ最下位で大会敗退が決まりました。
正直勝てる要素はあっただけに非常に残念です。宇佐美が後半立ち上がりに立て続けに2得点決めたのは良かったですが、それにしても守備がお粗末すぎですね。CBとSBの面子をもう1回考え直すべきだと思いますし、本大会で勝つ事を目指すなら、DF陣を重点的にOAで使うのはアリかもしれないですね。トゥーロンの反省会の意味も込めて、ちょっと自分なりに今の五輪代表の問題点を考察してみました。

●予選で7失点は重く受け止めるべきかどうなのか。CBとGKの連携は果たして取れていたのだろうか?

3試合で7失点を喫した関塚ジャパンですが、元々この世代は守備に関してはそこまで評価が高いわけでもなく、不用意に相手に点を許してしまうケースが多かったチームでもありました。守備の改善は以前から叫ばれていましたが、結局この部分を最後まで目に見える形で改善する事は出来ませんでした。今大会でもそれは顕著であり、守備的ボランチの山口を欠いていた&鈴木とのコンビでの出場が多かったCBの濱田を使わなかった&長らく正GKだった権田がいなかった。色々の事情があったにせよ、守備の稚拙さは責められてもそれはしょうがないと思います。

エジプト戦の相手のクロスから相手選手にボールが当たって、軌道が変わって失点してしまったプレーがありましたが、あれはCBの鈴木がボールをスルーしてしまったのが原因でした。不用意にボールをスルーした理由は色々あるとは思いますが、CBというポジション上、自陣のゴールを脅かす可能性のあるボールは全て自分が処理するんだ!くらいの勢いでプレーして欲しいと思います。結果的にそれが失点になっても、CBとしての心構えとしてそれくらいは関塚ジャパンで長くCBを張ってきたのですから、それくらいの自負は持って欲しいと思います。

コンビを組んだ山村に関しても、控えGKだった安藤に関しても、鈴木との連携はいまいち取れていませんでした。それはしょうがないと思いますが、やはりそこはレギュラーとして鈴木が自分で率先して足りない分を埋めるという気遣い。ここまで求めるのは酷でしょうが、それに関しての問題提起・そして解決への糸口は彼にあったのでしょうか?例えば権田のコーチングはきちんと声出しして出来ていたと思いますが(指示が的確かどうかは別として)、安藤はコーチングしているなという印象は今大会あったでしょうか?このコーチングがきちんと出来ていれば、前述の失点は防げたかもしれません。この原因は勿論安藤にありますが、守備に関しての不安要素を今大会は試合毎に修正するといった感じはなく、そのままズルズルと試合をこなしていたように感じます。関塚監督のフォローがここには一番必要だったのかなと思いますし、DFを統率する鈴木の経験における何らかのアプローチも個人的には欲しかった所です。

山村は所属先の鹿島ではCBを務めていますが、Jでのプレーを見る限りさしたる問題はないようです。関塚監督もその点を踏まえて、彼をCBで起用しました。しかし今大会では相手をよくフリーにさせる・空中戦で競らない・ボールが自分に渡ったときの処理における判断が遅いといったCBとしての経験の浅さが見えました。鹿島では岩政とコンビを組んでいるようですが、山村のCBとしてのプレーは岩政のフォローまたはコーチングによるものではないでしょうか。岩政は代表経験もあるDFですし、鹿島の将来を担う若手として山村にプロの世界のDF論を叩き込んでいるとも推測できます。しかしトゥーロンではそんな事をしてくれるベテランはいない。その事が山村のプレーが鈍い一因ではなかったかと思います。

●何度も敵に突破されるSB。比嘉・酒井高徳・大岩・吉田は通用しなかったのか?

失点の原因はSBにもあって、海外でも結果を残している酒井が初戦で捻挫をしてから、関塚監督は比嘉・大岩・吉田といった選手を起用してきました。酒井が元々守備の面で相手国に通用していたわけではないですが、オランダ戦では特に代わりの比嘉が何度も相手に突破されたりして、宇佐美・高木・斎藤といった選手がかわるがわるフォローに行っていた場面が目に付きました。また上がりのタイミングがいまいち周囲と合わず、いつまで経っても自身の陣地に戻ってこない比嘉に関塚監督が怒鳴るシーンもありました。SBが相手国に個の場面で負けていたのは事実です。1VS1では確実に突破される、誰かヘルプに行かなければならない、そうすると中央の人数が足りなくなるというジレンマがあります。

この試合、中央のダブルボランチの扇原と村松がほとんど試合出ずっぱりでして、体力的には一杯一杯でした。前線の宇佐美・高木・斎藤といった選手が主にサイドのフォローに行ったのも彼らの負担をなるべく増やしたくなかったという意図があったようにも思います。しかし前線の選手も体力的には厳しいものがあります。何より体力を一番求められるのは何度も上下運動を繰り返すSBのはずです。彼らがサイドで攻守の起点になる事で、他の選手の負担を少なくする仕事があるはずです。しかしそのSBが個々で圧倒された事で、他の選手の体力を余計に削る事になってしまいました。中にはヘルプに行くまでに持たなくて、何度も相手に危険なクロスを上げさせる場面もありました。個で適わないのはしょうがないので、せめてヘルプに間に合うようにに相手を足止めする。ビルドアップ出来る場面はなるべくビルドアップする。オーバーラップのタイミングはなるべく状況を見て考えて、裏を安易に取られないようにする、といった周りの選手の負担をなるべく減らし、攻守両面での仕事をきちんと行う事が、五輪に向けてのSBの課題といえば課題ですね。酒井宏も守備面という意味では今一歩の選手です。今大会のSBの出来は総じて最悪だったと思いますし、五輪に向けて何らかの対策は急務で行って欲しいとは思います。長友OA説もありますが、あんまり現実的ではないですね。

ボランチのローテーションは関塚監督の頭の中にあるのか?

今大会扇原は3試合フル出場でした。代わりがいないといえばそうなのでしょうが、体調低下におけるパフォーマンスを下げるためにも、五輪とほぼ同じ日程で行われるトゥーロンボランチのローテーションを確立させても良かったのではないでしょうか。五輪はトゥーロンで対戦した相手より強い国が待っていますし、選手自身のプレッシャーも半端ではありません。更にこのっ世代は対世界相手の経験値が少ないという弱点もあります。中盤で試合を組み立てる事が多い日本で、中盤のケアというものを第一に考えていかないといけないかなと個人的には思います。
村松・山本といった控えのバックアップとしての計算、山村もボランチは出来ますよね。そういった選手で中盤を構成する時間帯があっても良かったと思います。あくまで勝ちに徹するというなら、分かるのですが、どうも関塚監督の意図がそういうわけでもないようなので、あくまでテストマッチな意味合いで挑んでいたとしたら、色々試すのもアリだったんじゃないかなあと感じました。

●海外組を含めた攻撃陣のタレントの豪華さは五輪でも確実に通用する。足りないのは積極性。

今回の一番の収穫はこれでしょう。宇佐美・高木・指宿・大津といった海外組に加え、斎藤が頭角を現した今大会。長らく代表を支えてきた大迫・永井・清武といった選手を含めても、非常にタレント揃いの面々と言えます。浦和の山田が怪我で戦線離脱となってどうなるかと思いましたが、新規戦力は充分に敵に通用すると安心してプレーを見ることが出来ました。特にエジプト戦で指宿が相手のプレスに対応できず、ボールをキープ出来ない・スピードでも圧倒されているといった事態に大津を起用する事で、大津のキープ力・スピードが相手を混乱させ、結果的に宇佐美の2得点を演出する事になりました。個々で足りない部分を他の選手で補える。一辺倒の戦術ではなく、色んなバリエーションの戦術で試合に望めるというのは大きいと思います。幸い海外組は足元の技術は皆高い方なので、繋ぐプレーもなんなくこなします。宇佐美・指宿に至ってはシュート力も素晴らしい物を持っています。中々強調されませんが、改めてタレント揃いだと思います。

ただこれはA代表にも言えるのですが、繋ぐプレーに時々固執してしまう癖が良くないですね。この点、宇佐美は実に取捨選択が上手で、自分で行ける所は確実に行って、最後はシュートで終わります。指宿・高木はまだその辺りの判断が明確でなく、プレーに迷いが見えますね。もっと俺が俺がというエゴを強くもっていけば、相手DFは選択肢が増えて対応に困りますし、高木にしろ斎藤にしろ決められたシュートを判断の遅さで外してしまったという勿体無いプレーが減っていくと思います。斎藤もパスが巧いので、裏方に徹するプレーも多いですが、オランダ戦の1点目を自分のドリブルで生み出したように、もっとガンガン中に切れ込んでもいいと思います。とにかくシュートで攻撃を終える事が重要で、GKが弾いたり、ポストに当たったり、相手DFが焦ってクリアミスしたりでファンブルになる可能性が高くなって、そこからゴールを狙える事も出来るかもしれない。器用にこなせるという選手が多いのが攻撃を綺麗な形で展開して、相手を崩すことにこだわる一因になっていると思いますが、相手の実力が上・又は拮抗している場合は泥臭いプレーが勝利を手繰り寄せる一番の近道になると思うので、この辺を意識して攻撃陣はプレーすると、もっと良くなると思います。関塚監督も攻撃陣には満足している様子でしたが、反面五輪代表に向けての選出は悩み所も多いでしょうね。

長くなりましたが、僕は五輪代表にはトゥーロンで期待は持てましたし、上手く噛み合えば、グループリーグ突破はあるかもしれないと踏んでます。ただメダルが目標という以上、日本代表はまだまだ克服せねばならない課題が数多く残されており、それに対する改善方法のアプローチもまだ明確には見えてきません。全てを決めるのは関塚監督ですので、部外者の人間がいちいち文句を言うべき事ではないと思いますが、それでも日本に勝って欲しい。そして次代の代表を担う選手が出てきて欲しい。そういう想いはありますので、是非とも結果にこだわって五輪を戦ってくれればなと思います。