魔法少女まどか★マギカ

新房昭之×虚淵玄×蒼樹うめのトリオが送る、シャフト制作のオリジナルアニメ『魔法少女まどか★マギカ』が話題になっている。
元々注目度が高いシャフトと新房監督の最新作というだけでなく、ひだまりの蒼樹うめがキャラクターデザイン、ニトロプラスの看板シナリオライター虚淵玄が手を組んだのだから、スタッフ陣だけで見ればかなりの豪華布陣。話題にならないほうがおかしい。


ただ、新房・蒼樹に比べて、いまいちアニメファンからは虚淵玄という存在がどのような人なのか分かっていなかった人も多いと思う。新房は言わずもがな。蒼樹うめも『ひだまりスケッチ』をきっかけとして、その可愛らしい絵柄を武器にアニメ業界でものし上がって来た。 虚淵玄自体、アニメ業界との関わりは今作が初めてではなく、過去にも『ブラスレイター』はシリーズ構成・脚本。『ファントム』などで脚本として参加している。が、お世辞にもブラスレイターやファントムは世間の中ではそれほど注目度が高い・話題になったとはいえないので、どちらかというと、虚淵玄は三番手の注目度だったはずだ。

とはいえ、彼のニトロプラスの功績を知っている・プレイ経験がある人には、彼が今まで手がけた作品とは程遠い作風で、話のメインを張ること自体。まずそこに衝撃だったはずだ。そして虚淵自体。今まで自らが世間で思われていたイメージを払拭しようとしていた。作品についてのコメントも控えめな当たり障りのないものが飛び出すのみで、彼はこの作品をどうしたいのか具体的には述べる事はなかった。3話で放送時点で、ツイッターでようやく本性を現したが。元々は虚淵の名前を伏せるということも案にあったという話の通り、視聴者にサプライズ(とはいえ疑っている人もそれなりに多かったのでサプライズと呼んでいいのか微妙だが)をしたのは、視聴者にとって、先の展開が読めない『オリジナル』という強みがあるからこそだろう。オリジナルは本当にこういう時にいい役割を果たす。

新房監督は今までにない魔法少女を作りたいと意気込んでいた。新房監督は今や魔法少女の系譜にしっかりと名を連ねている『魔法少女リリカルなのは』の1期監督を努めているが、2期からは別の監督に交代した。なのはは原作が一応存在するということもあり、都築真紀が世界観を構築したとあってか、新房自体、自身が新たな魔法少女の牽引者になったという実感が湧かなかったのではないだろうか。(言われれば・・という感じで即座になのはで新房の名前が出ることはないはずだ)そういった想いがあったからこそ、というのもあったのではないかと思う。なのは1期本放送時に比べ、新房監督の世間的認識は今や飛躍的に高まった。今でこそ有名な新房監督の独特な作品作りも、なのはの時にはまだ発揮されていなかった持ち味である。(個人的には新房味を無理に出さないでも、良い作品が作れるのだから、そちら方面に才能を発揮して欲しくないのだが・・・。個人的になのは1期はシリーズの中でも圧倒的に好みだ)もしこの作品が成功すれば、新房監督も牽引者として、認知されるのは間違いないだろう。

虚淵玄に話を戻すが、彼の作品はあまりにもエログロな面が強調されているからか(実際はその認識で間違いないのだが)、とかく見過ごされがちなのが、彼の紡ぐ物語が読者にとって非常に読みやすいもので、文章力がトップレベルという点である。彼の文章は登場人物の心理描写が手に取るように緻密に展開されていく。日常的な世界観から非日常的な世界観への展開の運びは非常に巧みで、そこはかとないリアルさを感じ取れる。アニメとゲームは勿論話の作り方は異なるが、マギカの放送を見る限り、彼の色は十二分に活かされているといっていいだろう。彼の得意とする日常から非日常への誘いに、アクセントをつけているのが、演出であり、この辺りアニメ業界でも屈指の奇抜な構図を得意とするシャフトならではある。演出担当の劇団イヌカレー・音楽担当の梶浦由紀がこの作品にスタッフとして名を連ねているのは虚淵にとっては幸運だったと今ではそう思える。これから虚淵玄はどんな展開を我々に示してくれるのだろうか。それを考えるだけでも、来週が待ち遠しくてしょうがない。自分にとって久々に楽しみなオリジナルアニメである。

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