水木夫妻にだんだん。

大人気ドラマとなったNHKの『ゲゲゲの女房』。当初は視聴率が落ち込む等、苦戦を強いられましたが、段々と評価が上がってきて、今やちょっとした社会現象にまでなっています。水木しげる作品もこれがきっかけで世間の注目がグンと増し、本屋にいけば、水木しげるの名前を見ない日はありません。日本の漫画界の重鎮でありながら、今も尚精力的に活動し続ける水木先生には本当に頭が下がります。

元々水木しげるの作品は私は割と好きで、特に水木しげるの半生を昭和の歴史と絡めて書いた傑作『昭和史』が一番のお気に入りでした。学生時代何度この作品を読み返した事か。余談ですが、私が大学時代に歴史を専攻したのは、この『昭和史』と後は児玉先生監修による歴史漫画、そして『信長の野望』だったりしますw

アニメにおいても『ゲゲゲの鬼太郎』は言うに及ばず、子供の頃から大好きでしたし、『墓場鬼太郎』もリアルタイムでは全部観れませんでしたが後に全部観て、ゲゲゲとは違う、生々しいダークな世界観に尊敬の念を覚えました。そして水木しげる関連で、私は京極夏彦という作家にも出会えました。水木しげるファンとも主張したい気持ちがありますが、何分触れた作品が多くないのと、彼に対してコアな知識を持っているわけではない為、そこまで恐れ多い事は言えません。が、私の人生に指針を与えてくれた人として、非常に深い恩義を感じており、そういう意味では特別な存在であると言えます。

水木しげるのその半生は先ほど挙げた『昭和史』で彼なりの視点ですが、描かれています。若干脚色は入っているのでしょうが、それでも水木しげるという人物を知るにおいては欠かせない一冊ではあると思います。そこで彼の人柄に惹かれたと言いますか、マイペースでありながら、自分の興味ある事に対してはとことん突き詰めて妥協しない。そういうギャップが自分の琴線に触れたのかもしれません。私も彼ほどではありませんが、マイペースですし、興味あることに対しては結構突き詰めるほうです。とはいえ、勿論水木しげる先生ほどのバイタリティはありませんが。

しかし水木しげるという人物を知るには、これだけでは足りません。あくまで昭和史は彼の視点で描かれた作品であり、その読者である私達も水木しげるという視点を共有せざるを得ないので、水木しげるをもっと知るには、それに近しい人物の視点を得なければいけませんでした。
そんな中、始まった『ゲゲゲの女房』はそんな私の欲求に見事に合致した作品であり、今回のドラマ化は素直に嬉しい朗報でした。

ドラマ版は漫画家としての一面以外は基本駄目人間である夫を信じて支えた奥さんの人柄が伝わってくるような暖かい作品でした。
正直、お見合いからの布美枝の人生といったら過酷な毎日の連続でした。後に子供に苦労話を聞かれた際に、『嫌だからといって実家に戻るという選択肢は無かった』という風な口調で返答しています。今でこそ結婚しない女の人も珍しくはないですが、当時29歳で、家の事業を手伝うにも女である自分にはやることは制限されていたという状況下の中、段々と肩身が狭い思いをしていた布美枝にとって、茂との婚姻は自分という存在を確立させるチャンスでもあったのと、これだけ段取りをして貰って、それを反故にしては色んな人に迷惑をかけてしまう。そのような気持ちがあったのだろうと思います。芯が強いのと心優しい布美枝らしいエピソードともいえます。

茂の昔馴染みという間柄で、たまに水木家を訪れては、うさんくさい儲け話を振ってくる、浦木という男がいましたが、それを演じていた杉浦太陽氏の演技がこの作品かなり光っていたように思います。杉浦氏は今回浦木役をオファーされた際に『皆にうさんくさいと思われたら勝ち』みたいなことを仰っていましたが、見事に視聴者にその印象を植え付けたのではないでしょうか。自分はあんまりドラマを見ない人間なので、杉浦氏に関しては、ウルトラマンの人、とか。元モー娘の辻ちゃんの旦那さんというイメージしかなかったのですが、今作で俳優としての杉浦太陽氏として認識する事が出来るようになりました。今後も色々なドラマで活躍して貰いたいですね。

ちなみに布美枝役の松下奈緒さん。実は私と同い年!いや〜同い年とは思えないほど大人な雰囲気を持った方でしたね。それと水木プロダクションで、長年水木先生を支えたアシスタントの菅ちゃんを演じた柄本祐! 実は私より年下!ぶっちゃけ年上だと思ってましたごめんなさいw 経歴を色々調べましたが、ドラマの出演数もそれなりに多く、かなり経験豊富な方のようですね。父親が柄本明という日本を代表する俳優ですが、そのプレッシャーに負けないで今後も頑張って欲しいと思います。

さて、『ゲゲゲの女房』残念ながら今日で最終回を迎えてしまいましたが、本当に良いドラマに出会えたと思います。 出来ればSPのような形でまだ水木家の話を放送して欲しいですね。 いきものがかりによる主題歌も素晴らしく、本当にスタッフ・キャストの方々にだんだんと言いたい気分です。 素敵な夫婦の話を半年間も堪能させてもらって有難うございました。

余談ですが、次の連続ドラマ『てっぱん』ではかつて『春よ、来い』で一世を風靡した、安田成美さんが主人公の母親役で出演します。 話的にはそこまでそそられるものはないのですが、『春よ、来い』での突然の降板から、十数年の歳月を経て、再び朝の連続テレビドラマ小説に出演を果たした所は興味深く、どのような演技をなさるのか楽しみです。

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