安定した王道作品―恋姫†無双

真・恋姫†無双~乙女大乱~ 一 Blu-ray生産限定特装版真・恋姫†無双~乙女大乱~ 一 Blu-ray生産限定特装版

ポニーキャニオン 2010-08-04
売り上げランキング : 7451
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

近頃放送を終了した『恋姫†無双』ですが、三期となる乙女大乱のBDを買おうかどうか思案中です。 最近欲しいアニメが次々出てきて、ゲームもやりたいし(エロゲ含む)、全部叶えるとなると、金銭的に厳しいのですよね。 2月には空の境界BDBOXを買う予定で、これは高額なので、少しは金を貯めておかねばなりませんし。

三国志を模したエロゲ原作ということで忌避している人も多いのが実情ですが、それだけで敬遠しているなら実に勿体無いなあと思います。 ですが、その気持ち分からなくもありません。私自身、恋姫無双Basesonが第一作を発表した時からこの作品と付き合ってきましたが、最初は流石にこの作品倒れる気がする・・・・と不安を抱かずにはいられませんでした。三国志を模した作品なんて、今まで世の中に何回解き離れたことか。

Baseson恋姫†無双のプッシュの仕方が過剰だったのも、不安を煽った原因でした。とにかく宣伝攻勢が凄まじかったのを覚えています。

ですが宣伝に騙されゲームをやると『あれ・・・意外に面白い』となったのでした。最後の展開こそ個人的には投げっぱなしだなあと思うのですが、それを除けば、主人公のヒロインに対する厚い信頼とそれに応えるヒロインの絆が混沌とした世界観に非常によく映えており、アットホームな雰囲気を作り出していて、日常シーンでは適度なギャグを交えつつも、ほっとできましたし、シリアスな場面ではキャラをその雰囲気に合わせて、見せ場を各自作り出すなど、非常にメリハリの効いた作品になっていました。

第一作目では三国志という観点からは外れまくった展開が多かったのですが、第二作目では三国志の空気を保つ事に終始し、また数の多くなった登場人物を見事にまとめ上げ、魏・呉・蜀のそれぞれの3ルートを妥協することのない大ボリュームでラストまで駆け抜けてくれました。アニメもですが、ゲームも結構面白いので、アニメで知った人には是非原作もプレイして頂きたいと思います。

原作の話になってしまいましたが、アニメに焦点を戻します。アニメと原作の最大の違いは『男主人公がいない』ということです。原作では一応男主人公がいて彼を軸に話が展開していくのですが、アニメではそれをしませんでした。そうした原作との差異にアニメを批判する人もいるようですが、私としてはこれが結果的に成功を生む要因になったと思います。男主人公を存在させない事で、エロゲ原作にありがちなハーレムをなくし、ヒロイン達がとにかく暴れまわるという、独特の雰囲気を持つ作品に至ったのです。女の子達が数人集まってワイワイやるという作風は、アニメを見る大部分の男からすれば、自分では決して体験できない女子の日常を覗いていることで凄く新鮮に写り、新たな一面を作品の中に見出し、楽しめるのだとそう思います。

女子の日常を描いたものとしては最近では『とある科学の超電磁砲』があります。これも美坂美琴を中心として、女子学生達の日常を描いたことで好評を博しました。女子は男子と接しているときには決して見せない姿というのを誰かしら持っているような気がします。それが無防備になる瞬間が同姓の友人達とつるんでいる時だと思うのです。恋姫無双は原作では決して前面には押し出されてないヒロイン達のこうした一面を強調することによって、視聴者の心を掴んでいったのではないかと思うのですがどうでしょうか。

また恋姫†無双は伏線の張り方が巧妙です。一見そうした細かい部分がウリではないこの作品。私が感嘆したのは、この伏線の張り方と起承転結のしっかりした話の作り方でした。アニメ第一期4話で馬超曹操に襲いかかり、捕らえられるエピソードがあります。曹操に激しく恨みを持つ馬超は、父親を殺したのが曹操だから、仇として襲ったと主張します。後に関羽の仲介を経て、夏侯惇馬超が相対。夏侯惇馬超の父親が死んだのは不幸な事故だと説明するも、聞く耳を持たない馬超は武器を構えます。夏侯惇もそれに応じ、二人は対峙。一触即発の雰囲気に。しかしやがて馬超が震えだし、気の濁りが全くない武人としてのオーラに夏侯惇にかつての父の教えを思い出します。

『武術というのは正直なんだ。心にやましい所があれば、それが気の濁りとなって現れる』
『それじゃあ、やっぱりこいつの言ってることは本当で。父ちゃんは・・・・!』

冒頭、馬超が夢で見た、父との武術の練習、そこで父に教えられた言葉が、夏侯惇とのシーンに活かされる恋姫†無双屈指の名場面ですが、このように伏線を最大限に活用して話の肝に演出として盛り上げるというやり方が凄く上手い作品です。単なる萌え作品としては片付けるに惜しい箇所が色々とあり、見ていない人達にその辺の誤解を解いたり、面白さを伝えるにはとにかく1話をいいから見てくれ!としか言いようがありません。1話は関羽張飛が出会うエピソードですが、この先、張飛が何度も使う、『人は次に出会うまで別れ際の顔を覚えているもの』という恋姫無双における象徴的な言葉がラストで使われており、必見のエピソードと言えるでしょう。話自体もテンポが良くて面白く。何を隠そう私も恋姫無双のアニメがこれは期待できる!と不安を早々に一掃できた回でした。

3期で話としては良い所で区切りをつけてしまった為、4期は難しそうですが、恋姫無双はこのまま安定した良作として、皆の記憶に留めておいた方がいいのかもしれませんね。作品だけの話になってしまいましたが、登場人物によるキャラソンもいい曲が結構多いので、作品は見たけど、そっちはまだ聴いていないな〜って人は是非聴いてみてください。そうすることで恋姫†無双という作品をもっと好きになると思いますよ。